鶏卵アレルギーの具体的な除去解除方法と患者指導

■参考資料

日本小児アレルギー学会 「食物アレルギー診療ガイドライン2016」
伊藤節子 「抗原量に基づいて食べることを目指す乳幼児の食物アレルギー」 診断と治療社
林典子 「食物アレルギーの付き合い方と安心レシピ」 ナツメ社


■免責

様々な資料を参考に記載していますが、あくまで自己流の範疇なので、そう思って読んで下さい。


■背景

日本小児アレルギー学会の食物アレルギー診療ガイドライン2016において、
鶏卵アレルギーに対する経口負荷試験で負荷する負荷量については、low-dose/middle-dose/full-doseとして具体例が紹介されているが、
各段階をクリアした児に対して、具体的に何を食べてよいと患者指導するのかは示されていない。
鶏卵アレルギー児において、除去をどのように解除していくのかは、各医師の経験と裁量に任されているのが現状である。
鶏卵の経口負荷試験(以下OFC)で耐性化が確認できても、実際に何をどれくらい食べてもいいのか分からない、と困っている保護者は意外に多い。
「何をどれくらい食べてもよい」と具体的な患者指導を行えなければ、OFCを行っても患者の食生活は改善しない。
その一方で、鶏卵除去を解除すると医療側が想定しないレベルで解除を焦ってしまい、極端な解除をしてしまうこともしばしばである。
鶏卵除去を軟着陸させる方法を考察したい。


■前提

・抗原量に基づいて鶏卵の除去解除を行うためには、鶏卵の構成タンパクについて考える必要がある。

・鶏卵は、卵白と卵黄に分かれる。

・いわゆる「卵アレルギー」は、卵白に対するアレルギーであることがほとんどである。

・食物アレルギー全体がそうであるが、鶏卵も、卵白の中の「タンパク」に対して感作されている。



■鶏卵の組成

◎卵白
水分:88.4% タンパク:10.5% 脂質:ごく微量

◎卵黄
水分:48.2% タンパク:16.5% 脂質:33.5%



■卵白内のタンパク構成比率

オボアルブミン(以下OVA)  54%
オボムコイド(以下OM) 11%
リゾチーム 3.4%
オボトランスフェリン 12%

上記タンパク質は全てアレルゲンとして働くことができるとされる10-70kDaの大きさのタンパク質であり、これらが鶏卵アレルギー児においてはアレルゲンとして働いていると考えられる。
(もしかしたら、現在あまり注目されていないアレルゲンに対する感作も混在しているのかもしれない。
 但し、現在それを知ることはできない)

やや乱暴な議論になるが、実臨床的には、鶏卵アレルギーとは、OVAまたはOMに対するアレルギーだと考えている。
 (実臨床では、OM以外のタンパクに関する感作を知る手段がないため)

CAP-RASTでは、卵白・卵黄・オボムコイドのIgEを測定できる。
(現段階で、OM以外は、どのタンパクに感作されているのかを区別する方法がない)
卵白に対するIgEの高低×オボムコイドに対するIgEの高低によって、4グループに分けて考えている。

すなわち
①OVA・OMに感作されている群
②OVAに感作されている群
③OMに感作されている群
④OVAにもOMにも感作されていない群
である。

患者達がこのような群に分かれていると仮定して考えている。



■食品別OVA・OVM量

鶏卵の解除を行う場合、抗原量に基づいて解除を行うのであれば、食品別のOVA・OVMの量を知る必要がある。
ということで、同志社女子大学の伊藤節子先生の本のデータから計算してみた。

  OVA(mg) OM(mg)
固ゆで卵(水から20分) 1個全部 0.6 524
固ゆで卵(水から12分) 1個全部 1.2 1000
ビスケット(1枚=約10g) 3.4 3.6
卵ボーロ(1個=約1g) 5.2 3.9
クッキー(1枚=5g) 加熱170℃で10分 17.2 13.2
クッキー(1枚=5g) 加熱170℃で20分 1.4 1.4
クッキー(1枚=5g) 加熱180℃で10分 12.1 5.4
クッキー(1枚=5g) 加熱180℃で20分 0.1 0.25
カップケーキ(1個25g) 加熱170℃で25分 750 700
錦糸卵(1個) 84.2 1232
炒り卵(1個) 980 1280
温泉卵(1個) 9580 1220
生卵(1個) 10520 8495

この表から、様々なことが読み取れる。

卵1個は約50gである。
 生卵だと、アレルゲンになるOVAは約10g、OMは約8g入っている、というイメージ。

・同じ固ゆで卵でも、加熱時間が8分短いと、抗原量が2倍増える。
 加熱時間によって抗原量が2倍も違うと、症状が出るか出ないかが変わる可能性がある。

固ゆで卵(水から12分)1個より、卵ボーロ1個の方が、OVAが多い。
 つまり、OMに感作がなくOVAに感作されている患者では、大きなゆで卵では症状が出ないのに、小さな卵ボーロで症状が出るという現象が起こり得る。

ケーキやクッキーにおいて、加熱温度および加熱時間を工夫すると、食べられる可能性がある。
 伊藤節子先生の研究において、ケーキの中心温度が100℃を超えている時間によって鶏卵の抗原性が大きく変化する結果が出ている。
 加熱温度を上げて加熱時間を伸ばした加工品なら食べられる可能性がある。
 逆に、加熱温度を下げていることを謳っているカントリーマアム等のクッキーはアレルギーが出やすいという可能性がある。

・卵ボーロが、OVAに対する耐性化ができているかどうかを判別するための指標に使えるのではないか?
 ①子供が食べやすい。食べやすいので負担にならない。
 ②1個ずつ増やしていける。OVAを定量化しやすい。
 ③医療側からも、何個まで食べていいよと指示しやすい。



■高田流 具体的な除去解除の実例


①鶏卵アレルギー患者が来院する。

②CAP-RASTを測定し、卵白IgE・卵黄IgE・オボムコイドIgEを測定する。

③アナフィラキシー症例かどうかで大別する。

 他に被疑食物がなく鶏卵アレルギーの診断が確実であるアナフィラキシー症例では、すぐには経口負荷試験(OFC)は行っていない。
 「しばらく」除去する。
 「しばらく」の期間については、まったくevidenceがない。
 「しばらく」の後、固ゆで卵の卵黄(どうしても卵白が混入することになるので、卵黄負荷試験=少量卵白負荷試験という位置付け)からOFCを行う。

 (※但し書きをしておくが、ガイドライン的には、アナフィラキシー例であっても早期からOFCで限界閾値を確認し、少量でも食べられる量で続けることが推奨されていると思われる。
 少なくとも、少量摂取が耐性化に有効であると証明された鶏卵・ピーナッツに関しては。
 しかし、実臨床では、食べるのが怖いという保護者の心情にも配慮し、あまり急がないようにしている)

 逆に、軽症例や、本当に鶏卵アレルギーかどうか微妙な症例では、積極的にOFCを行い、限界閾値を確認しにいく。

 鶏卵アレルギーとして軽度例であったり、診断が不確実な例では、OMに対する耐性を確認する目的で、固ゆで卵(20分)の白身を使用したOFCを行う。


固ゆで卵1個分の卵白を無症状で食べられるということは、熱に対して安定なOMを1g食べられるということの証明になる。
 OMが大丈夫なら、次に加熱によって抗原性が大きく変化するOVAを少量から試していくことになる。


⑤固ゆで卵が無症状なら、卵ボーロから試している。
 卵ボーロは卵黄・牛乳・砂糖からできている製品が一般的である。
 牛乳アレルギーがない場合、外来で1粒ずつ増やしてみる。
 経験上、症状が強い人では卵ボーロの時点で症状が出始め、増やせない。


⑥卵ボーロが無症状なら、ビスケット・クッキーを試してみる。


※ 加熱加工品が食べられた人が、炒り卵を食べ始めるまでの間に試した方がいい食品は、
  データがないので、正直よく分からない。


⑦炒り卵でOFCを行う。
 炒り卵で無症状ということは、OVA1gに対する耐性を獲得したことの証明になる。

⑧マヨネーズ・アイスクリーム・プリン・茶碗蒸し等を解除していく。
 この順番は、自分の中でも理論付けが出来ていない。



■食物負荷試験を行うのは?

食物抗原の除去解除を行う前提として、毎回経口負荷試験が行うことができるのであれば、安心・確実である。
しかし、実際には、全ての段階で食物負荷試験を行うのは、入院の手間を考えると、現実的には無理である。

そのため、経口負荷試験の対象とする、マイルストーン的食品を選ぶ必要がある。

自分の場合は
①OMの耐性を確認する固ゆで卵 (1個分でOM1gを含む)
②OVA・OMへの耐性を確認するための炒り卵 (1個分でOVA1gを含む)
をマイルストーンとして選んでいる。

これは上記の抗原量に基づいた考えであり、正しいかどうかは正確には分からない。

  • 最終更新:2018-07-07 18:16:58

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